とうとう最後、長かったPBPもゴールです。
あんなにたくさんの自転車乗り達と一緒になってひたすらペダルを90時間近く回す日々は、おそらく世界でPBPにしかなくて、まさにそこでしか経験しえない体験。
それでは最後、ゴールまで語っていきましょう!
テールランプを点滅させるランドヌール
MORTAGNE-AU-PERCHEの滞在は僕が記憶しているよりも実際は長かったようで40分ほどだった
いったい何に時間を使っていたんだろう。
ボトルが盗まれるというトラブルがあったにしても、もう少し早くスタートできた気がする。
PCでの滞在時間は完走の成否に影響してくるので、手際よく利用するようにしたいもんだ。
なんてことを考えながらMORTAGNE-AU-PERCHEを後にすると、前方に二人のランドヌールが。
PBPではテールライトは常時点灯状態にしないといけないルールがあるのだが、彼らは点滅状態。
これ後ろについて経験してみるとよくわかるんだけど、点滅状態だと目に刺激が強くて前が見づらいんですな。
点滅状態だと電池の持ちがいいから、とか、そんな理由かな。
彼らの後ろについて走るのは危険だと判断してさっさと追い抜いて進む。
7000人も参加者がいるんだもの、悪意はないにしても中にはこういう参加者もいるよね。
わずかな時間の休憩でも体がバキバキに強ばるように
ペダルを漕がなくなるとすぐに体が固くなり、リスタート時に痛みを伴うようになった。
関節や筋を痛めているわけではなく、純粋に筋肉痛のようなものなのでこれに改善方法はなく耐えるしかない。
ロキソニンの錠剤を口にして痛み止めとする。
あとは体が温まるまで強度を抑えてペダルを回して様子見。
最後の夜もやはり危険、事故らないように最新の注意を
以前にひらまつさんから「PBP後半になると道の真ん中を走る人が出てくる」という話を聞いたことがあるが、本当に出た。
真っ暗で見えづらい画像で申し訳ない。
道の真ん中を走っている人がいる場合、右から抜く人もいたが基本的には声掛けしながら左側から追い越したい。
また、メカトラで途中停車している人もいるが、このぐらいの地点になって疲労満載になっていると目の前のことでいっぱいで、道路の脇に外れることなく修理作業をしている人もいる。
何も考えずにまっすぐ走っているとぶつかってしまうので、こうした人にも注意が必要だ。
他にも後方確認をせずに突然停車する人などもいた。
とにかく運転のおかしな人とは距離を置こう。
近くを走るだけでリスキーなので離れるのが唯一の対策。
最後のPC「DREUX」に到着
朝日が登り始めた明け方5時過ぎに到着。
コントロールに言ってスタンプをもらった。
僕は食事をしなかったが後で聞いたところによるとDREUXの食堂はレベルが高いそうだ。
何か食べておけばよかったかな。
とはいえ、胃腸をやられている人も多いだろうし、楽しみたくても楽しめない人もいたのではないだろうか。
無料の仮眠所
往路でしばらくご一緒したMムロさんとここDREUXでばったり再会。
彼は仮眠明けだった様子。
そしてDREUXは仮眠所が無料だという情報を与えてくれた。
これはありがたい、少し寝ていこう。
体育館にマットが敷き詰められているスタイル。
寝心地は全然良かった。
なぜこんなに良い仮眠所があるのに、みんな食堂の床でごろ寝していたのだろう?
横になると同時に眠ってしまった。
スマホとGarmin Watchのアラームをセットし忘れたままで、だ。
そしてたしかこの仮眠所にはスタッフが起こしにきてくれるサービスはなかった。
……
ガバッと飛び起きた!
薄暗かった体育館には朝日が差し込み始めている。
慌てて時計を見ると8時少し手前。
だいたい1時間30分ほど仮眠していたようだ。
危なかったー!!
熟睡せずに目を覚ますことができたのはラッキーとしか言いようがない。
荷物をまとめてすっかり利用者が少なくなった体育館を後にする。
DREUXのコントロールに入る前は僕の自転車の周りにもたくさん停車されていたが、ぽつりと取り残される形になっていた。
DREUX到着は82時間台で、ゴールまで時間はまだまだ余裕があるけど、なぜか気が焦る。
とはいえ、深い睡眠がここでとれていたせいか、この後睡魔に襲われることはなかった。
人生最大級に体がボロボロだけど、ここからランブイエまでは40km程度にすぎない。
あとはウィニングランだとポジティブに気分を上げてリスタート。
PBP最終日の朝日を眺めながら
本日も良い天気になりそうな予感のする朝日。
今年のPBPは一度も雨に打たれることなく進めたし、寒さに震えることもなかったのでかなり条件の良い気象条件だったのではと個人的には思っている。
酷暑で大変だったという声も聞くけど、暑さに強い体質なのか僕はそう思わなかった。
兄が乗らなくなって実家の小屋に眠っていたロードバイクCannondale Synapse Carbon(たぶん2015年モデル)は、最初にパンクをした以外はトラブルなく走ってくれた。
ここまで来ても変わらず時速30kmで平坦巡航できている。
エンデュランスロードバイクに乗ってブルベに出るのはPBPが初めてだったけれど、その真価を存分に発揮してくれた。
ゴールまでまだもう少し距離があるけど、ロードバイクに対して感謝の気持ちが湧いてきていた。
ここまで連れてきてくれてありがとう、と。
日本語が書かれたエイド
「ガンバレ」と日本語で書かれたエイドがあった。
エイドの主の奥さんが日本人なのだそうだ。
ついにゴール!
ラスト10kmくらいになると、名残を惜しんで走る人が増えるためか、スタート時を思い起こさせるような巨大な集団が形成されるようになる。
集団なのだけど、ゴールまでの名残を惜しんで走っているためペースが遅い。
一緒に走っていても楽にならないタイプの集団である。
さすがに人数が増えすぎて危険を感じたのでラストは一人で走り抜けることにした。
ゴール直前になると、着替えをしている人もいる。
ゴールの瞬間をお気に入りのウェアでやろうとしているのか、それとも、ともに走った者同士でジャージの交換をしているのかな。
ゲートをくぐり抜けてついにゴール!
多くの人々が拍手喝采で迎えてくれた。
僕も両手を上げてガッツポーズして応える。
ゴール直後、目の前にいたおじいちゃんが僕のスマホでゲートと僕を撮影してくれた。
長かったー!長かったけどゴールできたー!
ソロでゴールしたのでこの感動を分かち合える相手はいなかったけど、誰か一緒に走っていたら歓喜の雄叫びを上げていたんじゃないかな。
長時間一緒に走ってきた仲間がこの時いたなら、とても感動的なゴールになると思う。
画像の奥で座っている赤いTシャツのおっちゃんからゴールのスタンプとサインをもらった。
「おめでとう」と笑顔で言ってもらえたのが忘れられない。
完走メダルももらった。
ゴールタイムのステッカー?シール?のようなものが後日郵送されてくるそうで、それをメダルに差し込むことができるようになっている。
ゴール地点ではPBPジャージや反射ベストなどが販売されていた。
僕はPBPロゴが胸に印刷されたTシャツだけ買った。たしか10ユーロ。
ゴール時にもらったミールチケットで食事。
この時並んでいた列の前にいた方が日本人で、一緒に食べることになった。
その日本人ランドヌール、Oさんと呼んでおくことにしよう。
Oさんと僕は初対面だったはずがなぜか「さっきはどうもー!」みたいなテンションで話しかけられ困惑していた。
どうも僕にそっくりな方がいたようで、勘違いしたらしい。
このPBPで同じ出来事が3回ほど発生していたので、完全に僕のドッペルゲンガーが現れていたようだ。
自分自身のドッペルゲンガーに出会うと死んでしまうらしいので、そうならずに良かったかなと(笑)。
似ているという方の名前を聞いたので、後日pbpresults.comで検索してみると、その方は自身の顔写真をアイコンに設定していた。
なるほど…たしかに僕と似た顔をしている。
たぶん彼も僕と勘違いされて困惑すること多かったんじゃないかなと思います。
会場を去るのが寂しい
まだまだこれからゴールする参加者もたくさんおり会場は賑わっていましたが、僕の体力がそろそろ限界。
宿に帰ってぐっすり寝たい。
歩いたり自転車に乗っている間は平気だけど、動きを止めて立ち止まるとすぐ眠くなってしまう。
睡眠欲求がある一方で帰るのがまた寂しくもあった。
PBPでゴールすることを目標にブルベをやってきて、想像以上に大きなイベントで、それを乗り越えて。
お祭りが終わってしまった寂しさがあった。
久しぶりに学園祭が終わった後のような気持ちになった。
ランブイエ駅に向かって歩いていると、私服に着替え終わったランドヌールから声をかけられた。
「日本のジャージかっこいいよね!欲しいんだけどどうしたらいいかな?」とのこと。
うーん、僕は買ったことないからわからんのだよね。
海外発送もやっているのかな?
とはいえ、日本のジャージは海外でも大人気みたいだ。
「Hey Moto!」
ランブイエの町を自転車を押しながら歩いていると声をかけられた。
以前に知り合ったマレーシア人のランドヌールだった。
奥さんと一緒にカフェでランチしている。
彼もまた無事に時間内完走したそうで、互いのゴールを称え合った。
ヘルメットとアイウェアで日光から守られていない頬から下がガッツリと日焼けしているのが印象的だった。
ランブイエ駅から電車に乗る
駅は想像どおりゴール後のランドヌールで賑わっていた。
1時間に1本しか電車がないから、必然的に混雑する。
そんな中、つい先程一緒にゴール後のミールを食べたOさんと遭遇。
一緒に電車に乗って帰ることに。
自転車を車内に乗せて、座席に座りながらOさんと会話。
Oさんは陽気な人だったし、PBPという共通話題もあるものだから話は盛り上がる。
でも疲労と眠気がすごいものだから、会話の切れ間というか、2秒ほどの隙があると居眠りをしているという不思議な会話になっていた。
僕もOさんもサンカンタン駅で下車し、それぞれのホテルに戻るため駅前で解散した。
宿に戻って一眠り
すっかり顔見知りになっていたホテルのフロントスタッフにPBPの完走メダルを見せると拍手をもらった。
自室に戻ってシャワーだけ浴び、倒れるようにベッドで寝た。
ランブイエの町ではゴール後に着替え終わったランドヌールがカフェなどでお茶をしている姿を見かけたが、よく体力が持つなーと思う。
脱いだ衣類の洗濯やら翌日以降の宿をどこにするか決めるやら、やることはたくさんあったのだけど、この時はただもう休もうと思った。
約4日ぶりにゆっくりと眠ることができるベッドは最高だ。
枕元に完走メダルを置いて目を閉じた。
とったよ pic.twitter.com/ulDQIz72g1
— Moto@次回ブルベ未定 (@norabalwks) August 24, 2023