さあ、いよいよ往路の終わりBrestまでこのブログがたどり着きます。
他のPBP参加者はもうそれぞれのスタイルでゴールまで書き上げていますが、僕はマイペースでコツコツ書いていきますよー!
Saint-Nicolas-Du-Peleの明け方は肌寒い
明け方の気温はGarminによると13℃ほど。
昨日の明け方とほとんど変わらないけれど、仮眠明けで体内の熱が冷えていたせいか寒く感じた。
大枚はたいて買ったモンベルのバーサライト サイクルジャケットを羽織って走る。
2023年の本州縦断1900kmの後に買ったものだ。収納時の軽量・コンパクトさと着用時の汗の籠らなさが魅力。
バーサライトサイクルパンツも持ってきているが、これは雨の勢いがかなり強いか、相当な寒さにならない限りは使わない。結果的には今回のPBPではサドルバッグの肥やしとなった。
爆速トレイン現る
リスタートしてからしばらくは仮眠で凝り固まった体がバキバキで、ペダリングのたびに体の節々が痛んだ。焦らず出力低めでゆっくりと漕いでいると、そのうち痛みが薄れていく。
ちょうどウォームアップが終わった頃、だいたい10kmくらい進んだときだったろうか。
後方から15台くらいの大型トレインがやってきた。
時間は午前4時30分。
PBP参加者の眠気がピークに達する時間帯だというのに、このトレインは活きがいい。
GoProで録画していた僕のコメントもテンションが上がっている。
乗るしかない、このビッグウェーブに!
グッとペダルに力を込めてトレインをキャッチ。
乗ってみると、うっひゃー、こーれは速いわー!
快適快適♪
中切れするトレイン
……と思っていたのも束の間。
あれ、このトレイン、どんどん縦に伸びていってないか?
周りを見ると結構皆さん辛そうな顔している。
前のほうから徐々に何名か脱落してきた。
おや、これは……もしかして僕ら千切られている?
嫌な予感は的中。
トレインの前方にポジションを上げてみると、綺麗に中切れしておる。
このトレインは実際は先頭3名だけで構成されたトレインで、大規模に見えていたのは一時的についていこうとして飛び乗った人々の集団だったのだ。
こりゃいかん!
ブリッジをかけるため慌てて飛び出しなんとか合流に成功した。
豪脚のグループ「W」
先頭を走る3名、ゼッケンを見るとグループ「W」。
僕たち大多数の90時間制限組とは違い、84時間制限の枠で出走している参加者だ。
スタート時間も異なり、僕らのスタートの翌日早朝が彼らのスタート時間。
そんな彼らにもう追いつかれている。
さすが脚に自信のある猛者ぞろいのグループだ。
GoPro動画を見返すと、僕のコメントは「いやー、速いっすね。マジで速いっすね」を繰り返しています。
彼らはしっかり協調しながら走っていて、ローテーションをクルクル回しています。
5分くらい引いては交代するリズムだったかな。
このローテーションこそが彼らの圧倒的スピードの秘訣だと思います。
単独走ではとてもこのペースで走り続けられない。
ローテーションに参加
グループの中で最年長と思しき方が話しかけてきました。
名前はマットさん、カナダ人。
どこの国から来たんだと聞かれたので日本だと答える(僕はオダックス・ジャパンのPBPジャージを着ていないのでパッと見でわからない)。
すると、マットさんは流暢な日本語を話し始めた。
今はカナダに住んでいるが、昔は三重県に住んでいたそうな。
他の二人はカナダ人とドイツ人とのこと。
「助けるなら一緒に走っていいデスヨー!」
とのこと。
なるほど、前を引けということですな?
もとより無賃乗車するつもりもなかったので、ローテの順番が来たタイミングで先頭を頑張って引く。
PC5「CARHAIX-PLOUGUER」まで残り20kmほどのこの区間は、幸いなことに僕が得意な緩やかな下りがメイン。
この爆速トレインの先頭を引いても彼らの足を引っ張ることはなかった。
次のローテに先頭を回して最後尾に下がっていくと「Good job!」や「Thanks!」の声が飛んできて嬉しかった。こういう掛け声はトレインをいい形で継続するのに大事だなと感じた。
盛り上がるトレイン、そして解散
グロス平均時速30kmオーバーのスピードで突き進んでいく。
右側を走る他のランドヌール達をどんどんと追い越す。
追い越し時は想定外の事故を避けるためベルを鳴らしたり、「On your left!」などの声かけをするなど、高速ながらも安心感のあるトレインだった。
速いのに、速さのために無理をしていない、というか。
時折トレインにジョイントしようとする人もいたが、追い越し時の速度が違いすぎてキャッチできずにいた。
心拍が上がって眠気は消えるし、緊張感もあってGoPro動画の中で僕は「楽しー!」とはしゃいでいる。
CARHAIX-PLOUGUERへの最後の下り坂で僕が先頭を引いたときは、彼らの競争心に火を着けてしまったらしくトレインが崩壊。
全員参加の高速ダウンヒルバトルが勃発した(笑)。
彼ら全員DHバー掴んでガチ踏みしてきたのでさすがに千切られた。
僕はDHバー非搭載だったことを少し後悔した。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、CARHAIX-PLOUGUERに到着してしまった。
トレインのメンバーに軽く挨拶、互いに無事のゴールを祈り合って握手して解散した。
後からPBPのリザルトを見ると、マットさんともう一人のカナダ人はなんと58時間台で完走していた。
とんでもない速さだけど、あのペースで走っていたらこういうタイムになるんだろうなと納得だった。
CARHAIX-PLOUGUERも22分滞在でサクッと通過
「Saint-Nicolas-Du-Pele」で食事は済ませていたし、30km程度しか走っていなかったので、スタンプをもらって水を補給したらすぐに出発した。
路上で寝るランドヌールの数が増加
お分かりいただけるだろうか?
閉店しているレストラン前で2名ほど倒れている。
一説によると屋外で寝るときは仰向けで寝ないと、事故や病気と見なされてパトロールしているボランティアから声をかけられるそうだけど、実際はうつ伏せになって寝ている人もしばしば見かけた。
ここはスタートから540kmあたり。
僕もスタートから35時間ほど経過している。仮眠はとったけど3時間程度だし、やはり眠いは眠い。
ただ僕は「屋外で寝るなら暖かい太陽が出ている時間だけ」と決めていた。
夜寝るならPCの芝生か、仮眠所、もしくは私設エイドの周辺。
というのも寒い中で寝るのは体調に影響しそうで怖かった。
睡眠の取り方は人それぞれで正解はないと思うけど、僕は寝るときはちゃんとした場所まで走ってしっかり寝る派。
ラウンドアバウトでの事故
朝の7時ころ、ここでも事故を見かけた。
男性が救急車の左横で倒れている。意識はないようだった。
他にケガをしていそうな人がいなかったので単独での落車だろうか。
早朝で気温が低かったのでエマージェンシーシートでぐるぐる巻きにされていた。
ラウンドアバウトを直進するとき、自転車は円周に沿って進み出口に向かうが、そのときの縁石に乗り上げてバランスを崩して落車したのかもしれない。
フランスは路面が綺麗でラウンドアバウトなら速度を減速せずに通行することも実際可能ではあるが、慎重を期して徐行して通行するようにしたほうが良い。
事故や落車は一発でアウトになりうるのでどうぞ安全運転を。
朝霧の中を進む
坂を登り終えたあたりで朝霧が立ち込める高原のようなエリアにたどり着いた。
僕の写真ではあまり綺麗な光景ではないのだけど、実際は幻想的な風景で、多くのランドヌールが足をとめて写真撮影を楽しんでいた。
よく言われているとおりPBPのコースは延々とアップダウンの繰り返しなのだけど、こうして風景の変化があるので僕は飽きることなく走ることができた。
歯磨きして目覚まし
Sizunという町で一休みしているときに、PBPが始まってから歯磨きしていなかったことに気づいた。
歯磨きセットは持ってきていたはずなんだが見つからなくて、スーパーで歯ブラシを買った後で、サドルバッグの中から見つけた。
まさにブルベあるあるの「疲労と眠気で知能がゼロ」状態。
整理整頓の重要性を実感する。
ボトルの水を使って歯磨きと洗顔をしたけど、やはり目が覚めるし、気分がリフレッシュするのでオススメだ。
スーパーではドレッシングで味付け済みのサラダを買った。
PBP中は慢性的に野菜不足になるので、積極的に野菜を見つけて食べるようにした。
写真奥のほうに20000mAhのモバイルバッテリーが見えるだろうか。
amazonのセール価格で3380円で購入したものだが、USB-Type Cの出力ポートが2つ、Type-Aが1つついていて使い勝手が良かった。
充電速度もなかなか高速で助かる。
サイコンやGoProなどの小物はこういう小休憩のタイミングで充電していた。
Type-Cの出力ポートがあるモバイルバッテリーがおすすめ
モバイルバッテリーは他にも家に転がっていた10000mAhと5000mAhの2つを持っていったけど、Type-Aの出力ポートしかない古いタイプだったので、僕のスマホ(Google Pixcel 7)やライト(Olight RN-1500)などは充電が遅かった。
仕方ないのでこれらのモバイルバッテリーはなるべくサイコンとGoProの充電に回すようにしていたが、限られた休憩時間で充電を済ませたいブルベ用途には不向きだと思う。
往路最終地点Brestに到着
610km走行して38時間台でついに到着。
往路のスタンプがすべてブルベカードに押印されたぞー!
長かったけど、ここでのんびり休んでいるわけにはいかない。まだ半分終わっただけだ。
Brestを20分の滞在で出発。
もはや完全にPCで休憩しないスタイルができていた。
話に聞くところ、Brestの仮眠所はかなり良いらしく、ここで仮眠を取るのがオススメらしい。
Brestで印象に残っていること
僕はロードバイクを茂みに立てかけていて、出発の準備を進めていた。
すると、一人の20代と思しき若い白人ランドヌールが歩いてやってきた。
上の画像の四角で囲ったエリアに背を向けて立つ。
そして……野ションをしたんだ。
うおーい!
こんな近距離で野ションするなー!
ってかここPCなんだからトイレ行ってやってくれー!
マジでビックリしたよ…
駐輪時は野ションされる隙のないポイントにしよう。
おしっこを愛車にかけられたらたまらないからね。
相変わらずスーパーで買い出し
PCを出て少し走るとスーパーがあり多くのランドヌールが吸い込まれていた。
僕も彼らに倣って入店。
パッケージに書かれた「NUTRI-SCORE」を見るとBになっていて、体に良さそうだと思って買ったのむヨーグルト。これめっちゃ美味かった。
大量のランドヌールがここで食事を済ませているようで、ゴミ箱はすでにジェンガ状態。
鳩による絨毯爆撃
それはプルガステル橋に向かっていたときのこと。
海が見えてきてテンションが上がっていた僕に唐突に鳥の糞が降ってきた。
鳩による絨毯爆撃を食らった瞬間をGoProが記録していた pic.twitter.com/njP58o66hw
— Moto@BRM916群馬1000 (@norabalwks) August 29, 2023
まさかの顔面直撃。
テンションだだ下がりです…
停車して被害を確認した限り顔面以外はヒットしていないようだったのが幸い。
(後でサドルバッグもヒットしていたことに気づいて時間差で凹む)
プルガステル橋からの景観は素晴らしく、楽しく記念撮影している人々で賑わっていた。
自分も一枚写真を撮ってますが、なんとも気持ちは沈んでいたなぁ…
周りではたくさんのランドヌールがキャッキャウフフと記念撮影していた。
イチゴ配りの少年たち
他のランドヌールのブログでもよく目にしますが、橋を渡ったところでイチゴ配っていたんですよ!
多くのランドヌールがイチゴを食べたと報告しているので、いったいどれだけのイチゴを用意してくれていたのかわかりません。
僕も2個もらいました。
このイチゴのおかげで鳥糞で受けた心のダメージが回復したといっても過言ではない。
復路も頑張って走るぞー!
いよいよ復路スタート、辛いのはここからだ!
600kmブルベがクリアできればSRが取れるし、SRが取れたらPBPに出場はできるようになる。
が、PBPは600kmブルベを2本連続で行うようなもの。
制限時間は緩和されていくものの、ここまでの疲労と眠気を抱えてこの先600kmを走っていくわけで、キツさは実質通常600kmブルベの2倍だと僕は思ってます。
やはり多くの参加者が復路でグロス平均速度が下がっていきます。
体の負担は当然なんですが、眠気が特にきっつくなっていくんですよねー。
次回は眠気に苦しむ様子を中心に書いていきます。