PBPブログ5 2023 Paris-Brest-Paris PC6「Brest」から仮眠ホテル「ibis budget Pontivy Centre Bretagne」まで

ブルベ

600kmを折り返した地点で落車・事故もなく、体の関節などにも大きなダメージがない状態。
残り半分ではあるが、時間はまだ50時間残っているのでこれはもしかして結構余裕なのでは?

そう思っていた時期が私にもありました。
疲労と眠気が本気出して襲いかかってくるのは復路なんです。
それでは続きを書いていきましょう。

Brestから始まる登坂

Brest郊外から長く続く登りがあります
アップダウン基調なのはこれまでと変わらないのですが、登りが長く下りが短い。
これが750km地点まで続く。
僕はドロップバッグを利用せず、初PBP参加でいろいろ持ち込んでいたため、荷物も重く登坂はなかなか大変でした。

気温は高めの30℃ほど。人によってはかなり暑く感じるかもしれません。
疲労と相まって苛立つように何事か呟いているランドヌールも見かけました。

また、ダラダラと坂を登るのは景色の変化や向かい風から受ける刺激が少なく、眠くなってもきます
多くのランドヌールが話すマイクロスリープ、それが僕にも訪れ始めます。

坂道をペダルを回しているのに居眠りを起こす。
そんな経験は自転車を趣味としている人の中でも、おそらくランドヌール以外経験しないのでは。

普通の眠気とはまるで違う、鋭く刺すような眠気
しっかりと目を開けていたはずなのに、一瞬で意識が刈り取られる。
まるで切れ味のある左フックをアゴに食らったかのような…。

僕もハンドルに添えていた腕からガクッと力が抜ける経験をしています。
ハンドル荷重が強い方だとこれで即落車につながるでしょう。
実際にマイクロスリープで落車している人も多くいます

水を口に含んで、その刺激で目を覚ますということもしていたけれど、乾燥した暑さでボトルが空になってきた。

そういや私設エイドがさっきから見当たらないな…

天使現る

さすがに芝生で横になって寝るか。
マイクロスリープに襲われているのは僕だけではないのか、周囲にも横になって寝ているランドヌールがたくさん。

そんな時でした。

すまねぇ、芝生で寝ている数多のランドヌール達よ…
僕は快適な室内で、しかも柔らかなベッドで寝させてもらった。
軟弱で幸運な僕を許しておくれ…

10分寝るだけでかなり回復。
睡眠はその長さだけでなく、どんな環境で寝るかも大事だ
超快適だったので今思うと30分くらい寝かせてもらえばよかったかな。

女の子とそのお母さんに感謝を伝え、せめてものお礼にと持っていた補給食の羊羹を手渡す。
もっといいものをあげたかったけど、そのときの手持ちの日本っぽいものがそれしかなかったことを申し訳なく思う。

でも女の子は喜んで受け取ってくれた。

お土産選び

次PBPに来ることがあったら、もうちょっとちゃんとした日本土産を持ってくることにしようと強く思った。

あと、他の日本人ランドヌールと被らないような一風変わったものがいいかも。
同じもの渡して「またこれか」って思われると切ないからね…
さらに荷物にならないようかさ張らず、保存がきくものとなってくるとなかなかお土産選びも難しそう

シークレットPC「Pleyben」に到着

ふと現れるCONTROLEの文字。
おお、ここが復路のシークレットPCか。

GoPro動画を見返すとはぁはぁ息が荒いので、手前が結構な登りだったと思われる。

ここでの停車はわずか7分。
Pleybenの滞在時間が短すぎてまったく印象に残っていない

ふらついて走行するランドヌールも増えてきた

フランスは右側通行なので、この画像の方は逆走状態になりかけている。
ものすごくふらついて走っていたので、おそらくマイクロスリープと絶賛戦闘中だったと思われる。
声かけしながら左に大きく距離をとって追い越した

CARHAIX-PLOUGUERに帰ってきた

CARHAIX-PLOUGUERの近くにはデカトロンがある。
壊れた装備品があればここで買い足すのも手かもしれない。

CARHAIX-PLOUGUERには16:53に到着したとGoProの中の僕がコメントしていた。
走行計画よりも25分遅れていると少し焦っている。

トラディショナルなダンス

CARHAIX-PLOUGUERのコントロールでスタンプをもらって外に出ると、ヴァイオリンに合わせて輪になって踊っている地元の人たちがいた。

PBPはこうしたお祭り感があるから疲労に負けずにペダルを回し続けられる。
次のPCや訪れる町には何があるんだろう?という好奇心が力に変わるのよね。
寝る前に読んだ小説が面白くて、もう眠気が限界なのに「もう1ページだけ読んで寝るか」という感覚とでもいうか。

計画より遅れていようとなんだろうとメシは食う

スーパーで食事を済ませる方法を多用してきたけど、暖かい食事が恋しくなってきた。
CARHAIX-PLOUGUERのレストランはかなり混雑していたけど、暖かな食事はタイムロスをしてでも取りたい気分だった。

野菜と果物の姿はないけどちゃんとした食事にありついた。

食事もとったので復路のCARHAIX-PLOUGUERには1時間ほど滞在していた。

その後も長い登りを淡々と消化してGOUARECに到着

牧草を丸く圧縮したコレ、なんていうか知ってました?
牧草ロールって言うらしいですよ。
ラップで巻いてあって、中の牧草が発酵することでより牛にとって栄養価の高い干し草になるんだとか。

牧場のかほりが立ち込める道を通過すると、WP「GOUAREC」到着です。

PCと違ってコントロールがないので、ここも素通りする人が多いようです。
僕が訪れたタイミングは人がわずかでした。

GoProの中で僕はなぜか「シークレットPCに到着しましたー」とかコメントしている。
きてますね、疲れが
もう自分がどこを走っているのか理解していないようです。知能の低下っぷりが凄い

僕「Where is control?」
女の子「No control. Just eat and drink, if you want」
僕「Oh, I see, I see」

「うん、こいつソロソロやばいな」っていう女の子のスマイルがGoPro動画見返していて面白かったです。
GOUARECはノンストップで通過しました。

本当はどの町ものんびり観光ライドしたい

GOUARECの町でも多くの人が拍手して応援してくれた。

「ブラボー、ブラボー!」
という声をたくさんかけてもらった。

GoProの中の僕は疲れていても必ず手をふったり、挨拶したり、メルシーメルシー言っていた。
これ、自分のことながら結構大したもんだと思っていて。

人間、限界状態のときに本性って出るじゃないですか。
そこで笑顔が出せて、応援してくれる人に感謝を伝えるという当たり前のことができているというのは立派なもんです。

これができなくなったら、その時はいよいよピンチです。
応援してもらっても笑顔になれず手を振り返すモチベが出てこないなら、気力を回復させる方法はもう寝るしかないので制限時間オーバーかDNFは近い。

今思うと応援に応えることで自分で気力を回復させていたかもしれない。
メルシーメルシーって言い続けていたから、ぼっち走行が多い中でもテンションがキープできたんだと思います。

GOUARECの子供達はハイタッチ待ちしていることが多かった。
いいところ見せたいと思って疲れた素振りは隠してハイタッチ2連続成功させて通過。
いい思い出。

メカトラかな

4人で集団で走っていたのかな。
全員立ち止まってガチャガチャ、バイクをいじっていた。

固定メンバーで走るとトレインのローテーションが綺麗に回せて巡航スピードあがるけど、トラブル時に全員立ち止まってタイムロスすることもありそう。

メカトラは修理できたと思っても少し走ったらやっぱり気になる、直ってなかった、そして再度停車ということもあるしね。

なんてことを思いながら走っていた。

ここはスタートから750kmくらいの距離。
乗り手もバイクもダメージが溜まってきているから、気をつけていたとしても何が起こってもおかしくない

ベロモービルのフタ

ダウンヒルで相変わらずミサイルのような速度を見せるベロモービル。
対向車線をかっ飛ばして他のランドヌールを追い越していく。
あまりに速すぎるので対向車がきたときどうやって対処しているのか、とても気になる

登りが遅いので追いつくのだけど、このベロモービルは暑さのせいかフタを全開にしながら登坂していた。

めっちゃ前見づらそう。
でもフタと顔は距離あるし登りで速度出ていないから、意外と視界が塞がって走りづらいわけでもないのかな。

ようやくやってきた長い下り坂

750kmを走ってSilfiacという町を過ぎると約20kmのダウンヒルが始まった。

下ハンを掴んで前傾姿勢でガンガン進んでいきます。

エンデュランスロードはもともとのハンドル位置が高いので、下ハンを長時間掴んでも首や腰への負担が少なくて助かる

ダウンヒルの途中でTrekのMadoneに乗ったドイツ人と協調しながら走った。
「おお、CannondaleのSynapseがダウンヒルでエアロロードのMadoneに負けないぞ…!?」と密かに感動した。

結局のところ、ダウンヒルはガッチリ体型でコンパクトボディな乗り手のほうが有利なようです。

ドイツ人ランドヌールとはわいわい楽しく会話しながら走っていたけど、僕が宿を予約しているポンティビという町に到着したのでそこで解散。

Pontivyで宿に泊まる

PBP期間中、ルート上のホテルは大人気で空室はほとんどない
仮眠所に泊まるよりホテルのほうが当然高いけど、イビキなどに悩まされずにゆっくり休めるし、各種デバイス・モバイルバッテリーへの充電も安心してできるからだ。

このPontivyは僕が宿探しを始めた7月頃、唯一空室がある町だった。
Pontivyは復路でしか通過しない町なので、いまいち人気がなかったのかもしれない。

PBPのルートを外れて小道に入り、Google mapで宿までの道を確認。
だいたい3kmほど離れている
よし行くか!と思ったところで「ムッシュー!」と現地の若者に呼び止められた。

フランス語だったので詳しくは分からなかったが、どうもルートを間違えてしまったのではと心配して声をかけてくれたようだ。
「ホテルに行くんだ」と英語で答えると「なんだそうか」と笑顔になって手を振って去っていった。優しい

「結構遠いなー」などと呟きながら進んでいく。
Pontivyの町は大きくないので、すぐに郊外のような佇まいに変わっていく。

宿に到着。
僕が泊まるのは画像左のibis budget Pontivy Centre Bretagneだ。

建物に入って受付を探したのだけど見当たらない。
あれー?と思って建物を一周するとテラスでくつろいでいる人々がいたので、受付はどこか聞いてみた。
「隣の建物だ」と教えてもらった。
ややこしいのだけど、隣はIbis Pontivy Centre Bretagne。”budget”が名前についていない。
同系列のホテルで受付は一緒になっていたのだった。

チェックインは速やかに進んだ。
「4時間くらい滞在して深夜に出発するからチェックアウトの方法教えてほしい」と尋ねると、このホテルは客室に鍵はなく暗証番号式になっているから特に手続きはなく立ち去るだけで良いとのこと。
これは楽で助かるな。
自転車は車庫で預かれると言ってくれたが、できれば部屋に置きたいと伝えると快くOKしてくれた。

さて部屋で休むかと移動したとき、車庫の前を通り過ぎた。
その時、往路Villaines-la-Juhelまで一緒に走ったHさんがホテルの車庫にロードバイクを入れている姿が見えた。

まさかこんなところで再会できるとは!

お話を聞くとHさんは”Budget”じゃないほうのIbisに宿泊されるとのこと。
お互い宿にたどり着いて疲労困憊だったので互いの健闘を祈って手短に別れた。

部屋はこんな感じ。
全然快適で素敵すぎる。

後日わかったんだけど、Ibis budgetとIbisの違いはエアコンの有無が大きなポイントみたい。
フランスはエアコンがない宿も多い。
僕が今回のフランス滞在で泊まった宿でエアコンがあったのは、”budget”がつかないほうのIbisだけだった。

けどエアコンの有無なんてこの時の僕にはどうでもいい。
限られた滞在時間を最大限に活かす行動をとっていく。

充電祭り

部屋に入ったら何を置いてもまず充電
サイコンとGoPro、骨伝導イヤホンなどの小物を充電させていく。
スマホやライトは寝る前に充電するので後回し。

チェーン注油

これも寝る前に忘れずやっておきたい。
ロングライド用のウェットルブを仮眠の間に毛細管現象でチェーンに染み込ませておきたいから、早めにやっておくに限る。

PBP終盤はチェーンのルブ切れを起こして音が鳴っている参加者をたびたび見かけた
ルブ切れは徐々に進行してペダルが重くなっていくから、漕いでいる本人はなかなか気が付かない。
疲れているせいで出力上がらないのかなと思って、力を込めてペダルを回し、無駄に疲労したり関節を痛めたりする。

早く寝たい欲求の強さは重々承知なのだけど、この一手間で仮眠明けの負担が大きく変わる。
仮眠明けは特に出力がでないから、そこでペダルが重いと心が折れてしまいかねない

手洗い洗濯

ドロップバッグを持ってきていないから手洗い洗濯しないと、着替えがなくなってしまう。
ということで1日目に着ていたウェアをシャワー室でガシャガシャ洗っていたんだけど、

  1. 洗う
  2. 手で絞る
  3. タオルを巻いて衣類を絞る
  4. 干す

の工程をこの疲労と眠気満載の状態でやるのが面倒くさすぎて辛かった
だって、目の前にベッドがあるんだよ?
もう飛び込むだけで寝れるんだよ?
にも関わらず睡眠時間削って洗濯しなきゃいけないって…

気合でやり遂げたけど、やはり素直にドロップバッグ使うのがいちばん良さそう
そこそこ料金しちゃうけど。

いっそのこと「着替えなどせん!ゴールするまでこの一着で走り切るのみ!」と覚悟を決めちゃうのもありかもしれないけど、汗と汚れで肌のトラブル抱える可能性はある。

断捨離

2日めに着ていたle coq sportifのウェア。
富士ヒルもこれで出場したし、本州縦断1900kmもこのウェアだった。
思い出は数あれどそろそろウェアにもダメージが蓄積してきており、また今回のPBPで荷物の重量がジワジワと響いていることから軽量化のために、ここでサヨナラすることにした。

le coq sportifはフランスメーカー、そしてPBPの場でお別れすることになんだか感傷的になった。
このウェアを捨てる以上、必ず時間内完走しようと思いを新たにした。

(今思うとホテルからPBP後に宿泊予定のホテルに郵送するという手もありだったかな)

就寝前の味噌汁

このホテルは蛇口をひねるだけで熱湯が出てくる洗面台があった。
紙カップまで置いてある。
持ってきたパック味噌汁を飲む絶好の機会。

この時の味噌汁の味、これは忘れられない!
たしか12パックくらい入って100円くらいで埼玉のスーパーで売っていたものだ。


が!旨すぎる。
背筋がゾクゾクするほど旨い。これだ、これこそ僕の体が求めていた味だ。
味噌の味と香りが全身に染み込み、最高のリラックス体験を与えてくれた。

この味噌汁の旨さは金を出せば買える味じゃない。
限界状況で久しぶりに飲む日本から持ってきた味噌汁。
これは機会があったらぜひ試してほしい。

1食分だけお守りとして持ってくるとかさばらなくて良いと思う。
故郷の味はPBP終盤で大切な気力が回復させてくれるよ。

4時間の滞在を終えて出発

GarminWatchの振動アラームとスマホのアラームを両方セットしていたので無事起床できた。
仮眠は結局2時間くらいしかとれなかった
計画より短かくなってしまった。
ここでは4時間寝ておきたかったが、滞在時間 = 睡眠時間とはできないことに注意が必要だったな。

タオル脱水したとはいえ、まだ濡れているウェアを着る。
冷たい…
けどその冷たさで目が覚めてくる。

午前1時のひんやりと冷えた空気のポンティビの宿を飛び出した。
次のPC「LOUDÉAC」のクローズタイムが近い。ぐずぐずしているわけにはいかないのだ。
生乾きのウェアが一層冷えて辛かったが、走り出して10分もすれば気にならなくなった。

タイトルとURLをコピーしました