P組だった僕のスタート時間は8月20日午後7時45分。
90時間制限の長い長い自転車旅がスタートします。
走行に集中するためにスマホでの撮影はせず、GoProでのみPBPを記録していました。
ブログにはその動画から静止画を切り抜いて貼り付けつつ感想を書いていきます。
視界を埋め尽くす自転車
今まで最も多くの自転車が一同に会しているのを見たのは2022年の富士ヒルだった。
しかしPBPはそれを大きく更新してきた。自転車の数がハンパじゃない。
しかも乗り手は皆それぞれの国でSRを勝ち取ってきた猛者ばかり。
さすが4年に一度のロングライドのお祭りである。
ウェルカムミールで腹ごしらえ
ランブイエの会場に到着したのはだいたい午後5時ころ。
僕はPBP本登録時にウェルカムミールを注文していたので、これで最後の腹ごしらえをしておきます。
列に並んでいる途中で話しかけて仲良くなったアメリカ人と同席。
一緒にやってきた奥さんはPBPを走らず見送りにきてくれているのだとか。
ゼッケン番号が分かれば結果はわかるんだけど、聞いていなかったな。
無事にケガせず完走できたことを祈る。
めっちゃチョロチョロとしか出てこない冷水機。
世界各国のランドヌールが全員この表情で水が貯まるのを待っていました。
PBP中の料理は味が薄いと聞くので現地で買った塩を持っていったけど、テーブル上に塩とコショウが置かれていることが多かったので、ただの重りになっていた…
途中で捨てました。
P組の列に並ぶ
スタート時間の1時間前くらいになると、自分の出走ウェーブのアルファベットが書かれたプラカードを持った人が現れ、車検に向かう列が構成されていきます。
そこに並んで待っているとおっちゃん達の車検が始まります。
ちゃんと前後のライトが点灯するか、反射ベスト持っているかなど見られます。
この時に不備があって車検通らなかったらどうなるんだろ?
車検が終わるとランブイエ城前のブースでブルベカードにスタンプが押印される。
あとは再び列に並んでじっとスタートの合図がなるのを待つのみ。
待っている間は他参加者と雑談したりして過ごす。
こちらのタイの女性は話好きで周囲の参加者と対話してスマホで動画撮影していた。
僕との対話もタイのyoutubeかどこかでアップされているだろうか。
pbpresult.comを見るとタイの完走率は50%と厳しめではある中、彼女も無事ゴールしていた。
というか、タイの参加者では2番目に速いタイムだった。
いよいよスタート
MCのカウントダウンが終わり、観客の歓声とともにスタートゲートをくぐる。
車道に出て走り始めるとすぐに巨大な集団ができあがる。
ブルベとは思えない大集団で空気抵抗がまるでない。
人によってはロードバイク同士のわずかな隙間も埋めてくるので、ひやりとする場面もあった。
また、前を走るロードバイクのなんらかの部品(おそらくテールライトの蓋?)が外れ、後続車のフロントホイールのカーボンリムにぶつかるのも見かけた。
ぶつけられたのがたまたま日本人参加者で、少々ショックを受けているようだった。
アクセサリーの組付けが甘い参加者もいるので、スタート直後はそうしたトラブルに巻き込まれないようある程度車間をとっておいたほうがいいかもしれない。
いきなり後輪パンク
流れにのって走りつつ、要所要所で追い抜きをしていき「悪くない出だしだ」なんて思っていた15km地点。
まさかの後輪パンク。すぐに車道に寄せて後続の迷惑にならないところまで道を離れる。
追い越してきた自分のウェーブの参加者にどんどんと追い抜かれていく…。
最高に気持ちよく走れていただけに残念だ。
これまでブルベで一度もパンクを経験したことがないのがささやかな自慢だったのだが、PBPにてついに記録が途絶えた。
けど、逆に考えると良い記念というか、「PBPでブルベ初パンクなんですよー」というのはなかなか悪くない気がする。
タイヤとチューブを外して、パンクの原因をしっかり見定める。
空気はかなり高圧にしていたし、段差を超えた後でのパンクでもないので、リム打ちパンクの可能性は低いと思っていた。
幸い、まだ日没前だったので手元はよく見える。
タイヤの内側をなでながら丁寧に探っていくと、細い金属の針のようなものがPBPに備えて新品にしたタイヤのセンターを貫通していた。
早く原因が特定できてよかった。
そこからは手早くインナーチューブを新品に交換、タイヤに組み付け、ハンドチューブで空気を入れていく。
もしパンクの原因を特定せずに新しいインナーチューブを突っ込んでいたら再びパンクしていただろう。
ブルベでのパンク修理は時間がかかっても冷静に対処してほしい。
パンクが2連続で発生した場合、気持ちの立て直しが難しいだろう。
早めに復旧できたつもりだったけど、なんだかんだで30分が経過していたことが目の前を流れていく集団のゼッケンでわかる。
僕より2つ後に出走した「R」グループに変わっていた。
手近なトレインに乗っかりリスタート。
僕のパンク修理が終わるのを待ってくれていたかのように太陽が沈んでいった。
走行開始15km地点で後輪がパンクして、修理に27分ほどかかっていたことが分かったりして楽しい pic.twitter.com/3tntTi4bCk
— Moto@BRM916群馬1000 (@norabalwks) September 8, 2023
赤いテールランプが織りなす光の列
これはPBPで見た絶景の中でもベストなものの一つ。
真っ赤なテールライトがフランスの地平線に横一列にずらりと光ってとても綺麗だった。
まさにPBPでしか見れない光景だと思う。
乗っけた画像だといまいち光の列が見えないのだけど、次回2027年にPBPに初参加される方は楽しみにしていてもらいたい。
初めての私設エイド
ボトルの水が少なくなってきたところで、人だかりが見えた。
おお、水を配ってくれている!
停車するとおっちゃんが近寄ってきてくれて、ペットボトルから水を分けてくれた。
ありがたい。
フランスの乾いた気候は汗が出ているように感じないけど、体内の水分はどんどん蒸発するから、喉は乾くんだよね。
お礼を言って出発。
あたりはすっかり夜。
反射ベストの集団が街中を疾走していく。
昼間は少し暑かったけど夜は適温。
GoProに写ってはいなかったけど、フランスの田舎道は明るい建物がないから星がとっても明るい。
気持ち良くグロスアベレージが上がっていく。
夜遅くにも関わらず、たくさんの街の人が応援してくれる。
子どもたちは「Allez! Allez! Allez! (行け行けいけ!)」と声をあげてくれる。
こんなに声援を受けながらライドできる経験ってなかなかない。
Mortagne-au-Percheに到着
119km地点。
真夜中なんだけど音楽がドンツクドンツク鳴り響いている。
ここはPCではないのでブルベカードにスタンプは増えない。
特に休憩や補給が必要ない人によっては素通りOKなポイントだ。
ルデアックでドロップバッグを利用しない僕はすべての荷物を担いできているので、このあたりでかすかに肩と腰の痛みが出ているのを感じた。
経験上、肩と腰の痛みは放っておくと後悔することになる。
リュックの中身が重いためなのはわかっているので、ここでの休憩で重量のある荷物をサドルバッグに移すなど対策した。
見た感じそれほどレストランが混んでいなかったので食事を取ることにした。
ここではオムレツを頼んだ。
美味しかったのだけど、調理が終わるまで結構時間がかかっていた。
そのぶん出来立ての料理が食べられたから良しとしよう。
コーラとスープと炭酸水、あと何らかのパンとオムレツ。
合計金額は1600円ほど。
支払いはクレカでOK。
どこのPCでもWPでも使えるから多額の現金を持っていかなくて済んで安心だ。
あと、念のためここではインナーチューブを一本追加で購入しておいた。5ユーロ。
消耗品もある程度購入できるし、(僕は利用する機会がなかったが)バイクの不調があった場合には見てくれるメカニックもいるのがありがたい。
このWPではゆっくり過ごしていたので滞在時間はたっぷり1時間。
今振り返ってみるとあっという間に時間が過ぎているねー。
PC1 Villaines-la-Juhelまで
GoProのバッテリーが切れてしまい充電中だったため、この区間は動画で記録が残っていない。
覚えていることとしては、飛び乗った時速30kmで安定走行するトレインの中に一人、スペシャのルーベに乗った日本人ランドヌールの方がいて、ちょこちょこお話しながら走行したこと。
イタリア人主体で構成されていた安心・信頼のトレインで、無理な加速や減速がなく、おしゃべりに華が咲いたもんです。
その方は「U」グループだったので僕より5つも後ろだ。
つまり、1時間15分後の21時にスタートしている。
パンクがあって修理に時間がとられたし、Mortagne-au-Percheで飯を食っていたとはいえ、Uグループに追いつかれるとは、なかなか心理的に焦る。
PBP挑戦3度目だという彼Hさんいわく、今回は時差の修正をすることなく挑んだという。
日本の時差引きずったままフランスに合わせないようにすれば、夜スタートのPBPには最適なんだとか。
実際効果的だったようで、すでに若干の眠気を感じている僕とは違い、Hさんは元気いっぱいだった。
研究熱心なタイプのロードバイク乗りでPBPだけでなく機材やペダリングについての持論を聞かせてもらいながら楽しくライドができた。
午前4時49分にPC1到着と同時に解散した。
後日pbpresult.comを確認してみたら残念ながら復路ルデアックでDNFされたようだ。
機材トラブルか体調不良か…
快調に見えたし、Hさんは普段は100kmを4時間で走行するトレーニング(速い!)を積んでいると言っていたので走力もまったく問題なかったはず。
PBPでは何が起きるかまったく分からない。
実力・計画に加えて運もまた大きく影響すると思う。
グロスアベレージはこの区間が最速
Mortagne-au-PercheからVillaines-la-Juhelの区間はグロス27.17km。
PBPにおける最速区間だった。
今から思うと疲労を避けてのんびりペダルを回すよりは、ある程度高速で走っていたほうが眠気対策としても有効だったと思う。
速くゴールできたほうが起床している時間も当然短くなるので、睡魔による落車を防ぐこともできるだろう。
長時間の肉体的負荷に耐えられるようトレーニングは積めるけど、長時間寝ないようにするトレーニングはあまり聞いたことがないし、それほど鍛えられるものでもないと思う。
天性の才能で眠らず走り続けられる方もいますが、真似できるものではないかなと。
ロングライドでもスピードは大切だなと思った次第です。
なお、Villaines-la-Juhelでは食事を取らず出発しましたが、ログを見るとなんだかんだ40分も滞在している…
次回はPC2Fougèresまでを書きます
ようやく長い夜が開けます。
フランス前入りが早くて完全に現地時間に体が対応していた僕にとって夜中のライドはきつかったです。
次の話もなるべく早いうちに書いてしまうぞー。