SR600 S.K.Y.Line(2025)の学び③ 2日目

ブルベ

2日目 小田原からのリスタート

2日目のライドは長かった。
獲得標高も3日間でいちばん稼ぐことになる。

モーニングキャットサービスからの足柄峠

3時間ほど浅い眠りは取れた。
iPhoneとGarminウォッチでダブルでセットしていたアラームでしっかりと起床。
3分ほど時間を取って目覚ましと疲労回復のため、ベッドの上で簡単なストレッチをした。
足裏、背骨、太もも、腰などをほぐしておく。これをしておくと連日のライドが楽になる。

ロードバイクを担いで玄関に向かうと、昨晩は見かけなかった宿の猫ちゃんがロビーで待機していた。
モーニングキャットのサービスがあったとは知らなかった。嬉しい不意打ちである。
おそらく早朝のチェックアウト業務を担当している。
キャットを愛でていると、宿のオーナーさんも出てきてくれて見送ってくれた。
チェックインが23時でチェックアウトが朝5時
かなりゆっくりできたと言えそうだ。
おかげでかなり回復していた。

小田原城を背にしてロードバイクを走らせ、足柄峠前にコンビニの軒先で食事をした。
同時にここからの長い登りに備えて、食料と飲み物を補充しておく。

足柄峠はウォーミングアップにほどよい登り。

チェーンのルブ切れを感じたので、ここで補給。
ルブは300kmごとかホテルチェックイン前に補充しておくのが良いと思う。
こまめに補充しておくほうが脚へのダメージを減らせる。

とはいえ、毎回うまく定期的に補充ができないこともある。
雨でびしょ濡れになっていて一刻も早くシャワーを浴びたいときや、疲労が限界で怠けてしまったり、単純にうっかり忘れてしまうこともある。

そうしたケースに備えて水置換性がありつつ即効性のあるルブがブルベには向いていると思う。
水置換性があれば、土砂降りのなかでルブがチェーンから流れてしまっても、その場で解決できるし、ウェットルブでなくてもそれなりに走行距離は持ってくれる。
切れたらまたその場で追加すれば良いだけなので、頼りになる。
ウェットやワックスルブは塗布してから有効になるまで一定時間かかってしまうので、僕はブルベでは使っていない。

三国峠乗り越えて山中湖

足柄峠を少し過ぎると、快晴の空の下、富士山がくっきり見えてくる。

ダウンヒルを終えて少し落ち着いたら、次はオリンピックのロードレースでも使われた三国峠との連戦になる。

ここがSR600 S.K.Y.Lineの全登り区間で最も苦しいところだった。
10%超えの勾配が延々と続き、疲弊しきったタイミングで現れるドーナツ坂
心がポキっと折れる音がした。

サラ脚なら登れるだろうものの、ここまでの疲労があると11-34Tでも厳しい。
押して歩いたほうが疲れないというか、むしろ速いくらいの勾配
GarminのClimb Proがずっと絶望的に真っ赤か紫を示していた。

幸い僕はフラットペダルで履いていた靴はアディダスのランニングシューズ。
この区間だけは押しダッシュで快適に通過した。

よくこんな坂でレースしていたな…
ツール・ド・フランスを走るプロ達はほんと凄い。
でも灼熱のあの夏の日本でここを走ったら、さすがに選手達も日本が嫌いになったんじゃないだろうか?
いや、絶対嫌いになったはずだ。

そんなことを思いながら三国峠を登り切りダウンヒルに入ると世界が一変する。

「ブワッ!」という効果音が頭に響き、目の前に広がる富士山と山中湖の超絶的な絶景。

過酷な三国峠を登り終えた者だからこそ、没入できる美しさがそこにはあった。登ってよかった
選手たちもきっとこの瞬間だけはレースを一瞬忘れてしまったのではないか。
少なくとも僕はSR600の制限時間を忘れて脚を止めて景色に見入っていた。

なお、三国峠のコントロールポイントは本来指標を撮影するのだけれど、自分はうまく見つけられなかったので、その先にあるパノラマ台を撮影した。

ここは観光客でごった返しているし、路上駐車している車の合間から写真撮影に夢中になっている人が飛び出してくる可能性があるから要注意で通行を。

山中湖はインバウンド客でごった返していた。
通過した頃の時刻は午前10:30くらいで、なかなかに賑わっていた。
ここでも道路を挟んで記念撮影している集団は車の往来を確認せずに道路を横断してくるので、飛び出し注意で。

最後に山中湖を訪れたのはコロナ禍の中の富士ヒルだったかと思うのだけど、すっかり様変わりしてしまっていた。
コンビニのサイクルラックの下がタバコの吸い殻やらゴミやらが散乱していて切なかった
綺麗に観光してくれよー…

コンビニに停まっていたハイエース、ミニバンはすべてインバウンド客。
このときコンビニ店員さんを含め半径50m圏内で日本人は僕だけだったかもしれない。

我々はこのインバウンドの勢いとどう付き合っていくべきなのか…
そんなことを難しい顔して思案しつつプリンを食べた。ブルベ中のプリンは元気がでる。

まさかの通行止め?県営林道西川新倉線

山中湖の喧騒を離れてサクサク進み林道に入っていく。
ここから先は県営林道西川新倉線。冬季閉鎖がされている区間だけど、2025年は4月26日に解除されているのは確認済み。

天気の良い日に走る人気のない林道は気持ちよくて好きだ。
空気は綺麗だし車は少なくて安全なのも良い。

って思っていたら、あれ?
通行止め?
ちょ、ちょ、ちょ…どういうこと?
軽くパニックになる。

頭の中に事前にSR600関連の記述でどこかで読んだ内容がよみがえってくる。
SR600では通行止めになっているルートを強行突破したことが判明すると、完走認定は取り消し。
今後の出走も認められなくなってしまうとか。

うーん、どうしたもんか。
もう一回県営林道西川新倉【ニシカワアラクラ】線の通行規制情報を確認してみる。
ちゃんと「規制はありません」の表記になっている。

ページの下段のほうを見ると、「問い合わせ先」が記載されていた。
今日が平日の昼間で助かった。電話してみよう。

電話はすぐにつながり、僕の所在地を伝えるとどうやら冬季閉鎖は解除したはずなのに、関係者が誤って施錠してしまったようだとのこと。
すぐに解錠するように動いてくれるそうだ。

とはいえそれを待っている余裕は僕にはない。
ロードバイクなので担ぎ上げてゲートを越えて良いかを確認するとあっさりOKが出たのでホッとした。
林道内は落石など簡易的に整備してはいるものの、アスファルトに穴やヒビ、グレーチングがカバーできていない溝などがあるから注意してほしいと親切に教えてくれた。

思わぬ時間のロスになったものの、ゲートの先は施錠していたからこそ見える交通量皆無の世界。
エンジンのついた乗り物がやってこない理想郷があった

富士の絶景独り占めの贅沢。
たまりません。
林道内は勾配もきつくなく、走っていてとても楽しい。
想像よりは道も荒れていなく、落石も少なめだった。
緩めのスピードで路面に注意しつつ絶景を堪能できる素晴らしい区間。

道中には外国人ハイカーと合計3人すれ違う程度だった。
「君たち、随分マイナーな道を知っているね」と感心してしまう。

悪路の本番、県営林道蕪入沢上芦川線

ほとんど連戦になる形で、県営林道蕪入沢上芦川線が始まる。
こちらはゲートが閉まっていることもなく、無事スタート。

さきほどの県営林道西川新倉線よりも落ちている落石のサイズも数も多い

グレーチングの溝もバックリ空いている

ヒルクライム中はついつい視線を近くに落としてしまうもの。
まるで縦型スクロールシューティングゲームのように、落石を前輪でひらひらりとかわす
けど落石の数が多めのため、何個かは前輪で踏んで弾いてしまった。

幸いなことにパンクもサイドカットもなく通過できたものの、人によってはここで一回くらいはパンクするかもしれない。

ガードレールの外側から鹿3頭が熊鈴をつけていた僕に気づき、ひょこっと顔を出してきた。
「おいっすー」と挨拶をすると、断崖絶壁の崖をひょいひょいと駆け下りて逃げていった。
野生の鹿のとんでもない脚力。尊敬の念を禁じ得ない。

どうにかパンクもなく無事突破。

エコパ伊奈ヶ湖を目指してゲートを開ける

棚田の綺麗な景色を眺めながら時折現れる激坂を登り、通行人のおじいちゃんに「おお、おお…すごいパワーだ」と驚かれながら再び山に入っていく。

そこに現れる「熊出没注意」の看板。
そして野生動物の通行を妨げるゲート。
開けたらちゃんと閉めて通行すること

ここから先のエリアは常時鳴っている熊鈴だけでなく、ハンドルに取り付けたベルも一定時間ごとに鳴らすようにしながら走った

そのおかげかクマと出会うことはなかった。
僕個人はこれまでのブルベで何度も山に入っているものの、まだクマと対面したことはない。

ここの登りは勾配もそれほどキツくなく、クマの心配さえなければ気持ちよく登れるはずだ。

そろそろ一休みしたいけど登りはまだまだ続く

日が暮れてくると景色が楽しめなくなってやる気が削がれていく。
ダラダラと南アルプス市の平地区間を南下していると、体に何かが当たってくる。
小雨かな?と思っていたが、補給に立ち寄ったコンビニでなにかが分かった。
蛍光灯にびっしりと張り付く羽虫たち。
走行中の僕の体にも小さな羽虫が大群で体当たりをしていたようだ。うひぃ。

萎えた心を回復させるのは人権のある食事。
下部温泉手前で見つけた麺や響さんに吸い込まれるように入店した。

あっさりテイストのスープが五体に染み込んでいく。
失われた塩分が補給されて活力がみなぎった。
ラーメンを待っている間にプロテクトJ1も塗り直して、残りのヒルクライムに備える。
時間の有効活用は常に忘れない。

下部温泉はすぐそこ。
温泉大好きな僕には協力な磁場が働き、うっかり宿に当日チェックインしそうになるが、予約済みの宿が富士宮に待っているので耐えきった。

「かぶおんせん」と読んでいたけど「しもべおんせん」が正しい読み方。
完走後に下部ホテルに立ち寄って温泉に入ったけど、ここは石原裕次郎も愛した温泉だそうな。

この後は本栖湖までの夜道を延々と登っていった
車通りはまったくなく、完全に孤独な世界
刺激が少なすぎると眠気が訪れてよろしくないので、骨伝導イヤホンでポッドキャストを聴きつつ淡々と登る。

後日昼間に訪れたときは景観もよかったし、ロードバイク乗りもしばしば見かけたから、楽しいヒルクライムができるエリアだとは思う。

道の駅なるさわから始まる約35kmの極寒ダウンヒル

標高1000mほどあるこちらの道の駅。
道中みかけた電子気温計の表示は5℃となっており、とても寒い。
冬並みの気温だけど、トイレは暖房が入っていてとても暖かい。

ここから35kmのダウンヒルで標高120mほどの富士宮まで一気に下り降りる
道も綺麗に整備されているのでスピードがぐんぐん出る。
結果、寒さもかなりのもので、膝がブルブル震えていた

モンベルの雨具の上だけ羽織り、内側にビニール袋を突っ込んで防風性能をあげただけで走れたけれど、悪天候の日はそれだけじゃ心もとないかも。
ここはユニクロのウルトラライトダウンベストがあったほうがいい
僕は筋肉と体脂肪が織りなすミートテックのちからで耐えきれた。

このあたりの車はとんでもなくスピード出す人がいるので要注意。
対向車で時速100kmは超える速度で走る輩もいた
ぶつかったらミンチになってしまうので、遠くから爆音が聞こえたら気をつけよう。

富士山本宮浅間大社の鳥居に到着。
ここで証跡の写真を一枚。
敷地内は広大で昼間ならゆっくり観光したいと思わせる名所。

「キャビンハウスやど」さんに宿泊。
ロードバイクは玄関前で快く預かってくれた

実は到着は午前1時くらいになってしまったんだけど、事前に遅くなると電話連絡入れてあり、フロントの方も丁寧に対応してくれた。

宿泊費はかなりリーズナブルだけど、しっかり清潔で快適に過ごせた。
館内着や歯ブラシなどのアメニティは追加料金となる。
洗濯機が完了するまでの間、無料で使えるマッサージチェアで体が溶けた。

オーバーナイトブルベは短時間滞在だから、こんな感じの宿がいちばん好き。

富士宮はまだインバウンドの団体ツアー客がくるような状況ではないそう。
落ち着いて富士山を楽しめそうだ。

ベッドに入ったのは午前2時。
ここで3時間ほど仮眠。

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